792人が本棚に入れています
本棚に追加
私や瑛士と多分同年代の鳴瀬さんと、それより年下の白石さん。でも年下だからといって、子供っぽい訳ではない。逆にフリーランスな仕事をきちんとして、私よりしっかりしている人という印象だ。その真面目で真摯な態度が好感度になって、つい見入ってしまうんだ。
「うん、可愛いなぁ」
彼女に聞こえないようにこっそりつぶやいたのに、くすりと笑う声がした。そちらに目をやると、鳴瀬さんがこちらを見ている。
でしょう?
口に出していないくせに、そんな声が聞こえた気がした。
「鳴瀬さん、べた惚れですね」
「それは、まぁ」
お互いにふふっと笑って和んだところで、自動ドアの開く音がして振り返った。試飲会のため店の外の照明は消してある。この時間に入ってくるとしたら、一人しかいない。
「瑛士、」
と反射的に呼びかけたところで私の動きが止まってしまった。
「ああ大浦さん。お疲れ様です」
「遅れてすみません。もう終わりですか?」
「大丈夫ですよ。でもそろそろ無くなりかけているから、先にお酒もらって下さいね」
今井さんと瑛士が会話しているのを、ただひたすら食い入るように見つめてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!