120人が本棚に入れています
本棚に追加
明日は休みだが、これ以上飲むと体に悪い、と省吾は会計を済ませて廉を外へ連れ出した。
「僕、どこまでも甲斐さんについていきますからぁ!」
「解った解った」
酔った廉をタクシー乗り場へいざない、省吾は彼の前に止まっている車に合図をした。
自動ドアが開き、この年上の男は廉をタクシーへ押し込んだ。
「こいつ、家まで送ってやってください」
運転手に札を握らせると、自動ドアは静かに閉まった。
いい気分でいた廉だが、足元を見ると何か落ちている。
「何だろ」
それは、マンションのカードキーだった。
「こ、これ! 甲斐さんの!?」
省吾はと見ると、廉の後ろのタクシーに乗り込んでいた。
タクシーはすでに発車しており、降りることができない。
廉はカードキーを握りしめると、運転手に向かって叫んでいた。
「後ろの車を、追ってください!」
「お客さん、難しいこと言うね!」
このキーが無いと、省吾は部屋へ入れない。
幸い運転手は車線変更などを利用して、省吾の乗ったタクシーの後ろに回ることができた。
「この鍵、何としても届けなきゃ」
その一心で、廉は後先考えずに省吾を追った。
最初のコメントを投稿しよう!