120人が本棚に入れています
本棚に追加
省吾のタクシーがマンションに停まると、そのすぐ後に廉の車が追い付いて来た。
「甲斐さん!」
タクシーから飛び降り、廉は省吾に駆け寄った。
「三好。どうして」
「落とし物です!」
廉は、勢い込んでカードキーを省吾に手渡した。
「これはうっかりしてたな。ありがとう」
落ち着いた様子の省吾に比べて、廉はまるで懐いた犬のような表情だ。
「よかったら、上がっていくか? 何なら、泊ってもいい」
ホントですか! と言いかけて、廉は言葉を飲み込んだ。
「いえ、ご迷惑でしょうから」
「三好は私の部屋で、何か迷惑なことをするのか?」
「あ、いや。そういう訳ではなく!」
いいから上がっていけ、と省吾は廉の肩を抱いた。
親密な省吾の仕草に、廉の意思は瞬く間に崩れ去った。
「じゃあ、ちょっとだけ」
省吾に勧められるまま、彼の部屋に入っていった。
最初のコメントを投稿しよう!