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「それで、甲斐さん。先方は何て言ってますか……?」
「今回のイベントに三好が加わらないなら、取引を続けます、と」
はぁ、と廉は翔吾のくれたドリンクを両手で挟んで額を付けた。
「やっぱり僕、クビだぁ……」
廉が草むしりなんかしているには、訳がある。
複合型リゾート施設に働く廉は、そこを拠点としたイベントを企画運営する部に所属している。
今回は、遊覧船を海賊船のように仕立てて、子どもたち向けのアトラクションを行う予定だった。
ところが、船を海賊船にドレスアップする会社との間に、トラブルが起きた。
全ては、廉の電話応対から始まった。
『お宅の社員さんは、電話でまともな会話もできないんですか!?』
言葉遣いが悪い、返答までの時間が長い、取次が果てしなく遅い。
それだけではなく、打ち合わせの時刻を間違えて先方に伝えた。
職人気質の強い取引先は激怒し、もう今後一切そちらとは仕事をしない、と来た。
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