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暑い。
いや、暑いを通り越して、熱い。
廉は、夏空の下、草むしりをしていた。
「もう少し。あと、ここだけで終わるんだ」
自分自身を傷めつけ、しでかした大失敗をそれで揉み消そうとしていた廉は、もういない。
自ら進んで決めたことを、責任を持ってやりとげる逞しい姿がそこにはあった。
「おい、ちゃんと休んでるか?」
ふいに声が聞こえ、廉が顔を上げると、そこには省吾が立っていた。
「あ、はい。休みます」
にっこりと廉は笑い、省吾から冷えた経口補水液を受け取った。
二人で木陰に座り、部長の話などして休憩を取った。
「部長にいろいろ話してくれたの、甲斐さんでしょう。ありがとうございます」
「いや、伝えたのは私だが、つまるところは三好の底力だよ」
お前は皆に、期待されてるからな。
そう褒めてくれる省吾に、廉は恥ずかし気な目を向けた。
「期待されてるかどうか解らないんですが、運営課の深見(ふかみ)さんからお誘いを受けました」
その言葉に、省吾は眉をひそめた。
(私以外に、三好に目を付けてる人間が?)
「マナーレッスンしてくれるそうです。電話の応対がきちんとできるように、って」
「良かった……」
「ええ。本当に良かったです」
「え? ああ、良かったな」
省吾は、胸の内で安堵していた。
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