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「私は、もう行くよ。草むしり、今日で終わりだな」
「はい。最後までがんばります!」
その意気だ、と省吾は廉の肩にポンと手を置き、立ち上がった。
去って行く省吾を見送っていると、彼はまた何か落とした。
「甲斐さん、落とし物!」
だがやはり、省吾はそのまま行ってしまう。
廉は、彼の落としたものを拾いに走った。
「車のキーだ」
これが無いと、甲斐さんはマンションへ帰れない!
走れば間に合わないことは、ない。
しかし廉は、それを大切にポケットに収めた。
「草むしり、早く終わらせて甲斐さんに届けなきゃ」
そして、一番に報告するんだ。
反省、終わりました、って!
廉には、もう解っていた。
省吾がどうしてこうも次々と、ものを落としていくのかを。
「よし、やるぞ!」
廉は天に向かって大きく両腕を突き上げた。
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