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「気にするな。子どもたちの夏休みまでに、工事は間に合う」
「甲斐さんが、僕と一緒に頭下げてくれたからですよね……」
ちびちびとドリンクを飲みながら、しょげた様子の廉だ。
無理もない。
プロジェクトから外された挙句、罰と称して草むしりなんかやらされてるんだから。
「部長のSっぷりにも困ったもんだ」
「始末書、また書き直しですって」
はぁ、と今度は省吾が溜息をついた。
報告書の上をいく、始末書。
事の顛末を書いたうえ、反省の意を述べなければならない。
A4一枚の紙きれに、どれだけ時間を食わせる気か、部長は。
この草むしりも、部長の発案だ。
普段はシロツメクサが大人しく生えている、うみかぜ広場。
しかし、夏になるとやっかいな雑草がはびこり出す。
オオアレチノギクに、アレチマツヨイグサ、セイタカアワダチソウ。
どれも引き抜くには力のいる、剛強な草本だ。
それを草刈り機ではなく、手でむしれとは酷な話だ。
だが、廉はそれを黙々とこなす。
僕はクビだ、と自分を責めながら。
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