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昨日に続き、廉は夏草をむしっていた。
だが、気持ちはやや上向き加減だ。
省吾が落とした一個だけの塩飴。
あれを舐めた後、元気が沸いた。
今朝はコンビニで同じ塩飴を一袋買い、舐めながら草むしりをしていた。
「どうだ、調子は」
昨日同様、ふいに頭上から声がした。
省吾が、また様子を見に来てくれたのだ。
「あ、甲斐さん。昨日は飴、ありがとうございました!」
「まぁ、疲労回復にはちょうどいいからな」
「飴の袋、大切に持ってます」
「変な奴だな。ゴミを後生大事に持ってるなんて」
ゴミだなんて、そんな。
省吾の気遣いの言葉が書かれた袋を、無碍に捨てるなんてことは廉にはできなかった。
「ほら、水分もちゃんと摂れ」
「あ、すみません。ありがとうございます」
省吾と共に木陰に座ると、廉は彼がくれたスポーツドリンクを口にした。
「ッ、は~ッ! 美味い!」
「ビールじゃないんだぞ」
「酒より、美味しいですよ」
それは何げない一言だったが、省吾から意外な言葉を引き出した。
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