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「三好は、いけるクチか。一緒に、飲みに行こうか」
「え、いいんですか?」
まさか、甲斐さんから誘ってもらえるなんて!
洒落たバーで、クールに一人でグラスを傾けているイメージの省吾だ。
そんな彼から誘いを受けるなんて、廉は嬉しいより先に驚いた。
「会社では話せないこともあるからな。OKか?」
「もちろんです!」
それは良かった、と省吾は立ち上がり、木陰から出ていった。
短い休み時間を使って、わざわざ会いに来てくれる省吾に、廉は感謝した。
すると、また省吾は何か落とした。
「あ、甲斐さん! 落としましたよ!」
彼はやはり、振り向きもせずに去ってゆく」
廉は、省吾が落としたものを拾いに、草むらへ入った。
「また塩飴だったりして」
だが今度は、丸めた紙だった。
「ゴミかなぁ」
しかし、省吾はゴミをポイ捨てするような人間ではない。
廉は紙を広げてみた。
そこには、青いインクでこう書かれていた。
『本日18:00に搬入口で』
「お誘いの手紙だ!」
おそらく省吾は、始めから廉を飲みに連れて行くつもりでいたに違いない。
社内でも切れ者の省吾だ。
男性、女性、どちらからも憧れのまなざしで見られている彼に誘ってもらえた。
それだけでもう、廉のメンタルは一気に上昇した。
猛然と草むしりを再開し、定時には目標以上の面積をきれいにすることができた。
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