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シャワーを浴び、着替え、鞄を持って廉は搬入口へ急いだ。
省吾を待たせることなんかできない、と走った。
だがしかし。
「早かったな」
「あ……。待たせてすみません!」
10分前なのに、すでに省吾は約束の場所へ来ていた。
(シャワーで時間とったからな。でも、汗臭いと失礼だし……)
しおれてしまった廉に、省吾は微笑みかけた。
「私が早すぎたんだ。悪かったな」
「いえ! そんなことありません!」
じゃあ、行こうか。
省吾は廉と肩を並べて歩き始めた。
こうして見ると、彼はずいぶん背が高い。
(僕より頭一個分は高いよね)
「甲斐さん、学生の頃なにか部活されてましたか?」
「バスケ、やってた。どうしてだ?」
「いや、背が高いなぁ、って思って」
「三好は、何かやってたか」
「吹奏楽部です」
「楽器は?」
「サックスです」
それはいいな、と省吾は嬉しそうな声だ。
「私はジャズが好きなんだ」
確かにサックスは、ジャズの花形だ。
(僕、そんなに巧くなかったけど……)
しかし、この会話で行先が決まった。
廉は軽く食事を摂った後、省吾の行きつけのジャズバーへ共に入った。
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