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心地よいジャズの流れる中、ほろ酔い加減の廉は、まだまだ素面の省吾から仕事の話を聞いていた。
「それで、内装の海賊の人形なんだが」
「二体並んでる、ってやつですか」
「今一つ、迫力に欠けてな。よくできてはいるが、所詮は人形なんだ」
「前を通ったら、センサーで感知して、動くようにできませんか?」
「動かすのは難しいな。なにせ、もうでき上ってる」
う~ん、と廉は酒を一口飲んで考えた。
「じゃあ、目が光る、というのはどうでしょう」
「目か。なるほど」
それなら、複雑な回路は必要ない。
でき上った人形に仕込むことは、簡単だ。
「それで行こう。ありがとう、三好」
「こちらこそ。でも……」
「でも、何だ?」
再び、廉は酒を含んだ。
「いいんですか? 僕はプロジェクトから外された人間ですよ」
「私が考えたことにして、上に提案するよ。巧く成功して好評だったら、その時改めて、実は三好が発案した、と打ち明ける」
そうすれば、部長も三好を見直さざるを得ないだろう?
省吾の笑みは、どこかいたずらっぽい匂いをかもしている。
さすが社内一の切れ者、と廉は感心した。
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