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冬の短い太陽が、赤い未練を残して沈みゆき、藍が空を支配してゆく。
仙道美優里は、足に重石でもついたような歩みで、とぼとぼと土手を歩いていた。
『仙道は頑張ってる。それはわかっているが、今の成績でこの第一志望は難しいな』
面談で担任が渋い顔をしながら告げた言葉は、頭の中でわんわんと反響するように繰り返されていた。
家に帰ってこれを告げれば、母は激昂するだろう。
『わざわざお金を出して、中学から私立に通わせたのに、一流大学の足がかりの高校にも行けないの!?』
『私とお父さんは三流だったから、あなたは一番でないと駄目なのに!』
『何の為に今まで育てたと思ってるの!?』
母が怒りを撒き散らす間、父は新聞で顔を隠すか、おもむろに席を立ってリビングから自室へこもり、我関せずを貫こうとする。その背に母が投げかける言葉も、容易に想像がつく。
『あなたがそんな風に情けないから、美優里もこんなどうしようもない子に育ったんじゃない!』
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