狭魔狩人鈴音

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 セーラー服は少々古めかしく、この辺りでは見ないデザインのものだ。地元の高校生というわけではないらしい。何より、普通の女子高校生が、日本刀を振るってあんな化け物を瞬時に葬れるはずが無い。 「あの、あれは何だったんですか」  踏み込んではいけない。十五歳の小娘でもそれはわかっている。しかし、興味は恐怖を上回って、美優里は少女に問いかけていた。  少女はその言葉を受け、顎に手を当てて考え込む素振りを見せた。答えてもらえないかもしれない。その思いもあったが、しかし彼女はまっすぐに美優里に向き直り、口を開く。 「奴らは狭魔。その名の通り、昼と夜のあわいに棲む者」  なるほど、狭間に棲む魔物だから、狭魔か。 「奴らは、暗い感情を抱く人間を好んで近づき、喰らって、己が力を増幅させる。放っておけば、手に負えない危険な妖異となるだろう。だから、その前に狩る必要があるのだ」  青い瞳を黒い睫毛の下に半分隠し、己にも言い聞かせるかのように、少女は語る。だが、そこに横切った哀愁も刹那のことで、再び視線が美優里に向く。 「さあ、もう行くが良い。そして今日のことは誰にも言わず、忘れてしまうのだ」  言うが早いか、少女が踵を返す。 「待っ……!」  まだ訊きたいことはある。少女の素性についても聞いていない。しかし、追いかけようと伸ばした手の中で、スマートフォンが軽快な着信音を立てた。
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