ブラック・ボックス

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「なんて言ってました?」 え?といかにも面倒くさいという顔をしておじさんがこっちを向いた。 「バカかお前は。あんなんでわかるわけなかろう」 ……まあそうですよね。 三人(二人と一匹)で車座になる。中心にはもちろんアタッシュケース。 おじさんと僕は会話を交わすこともなく黙っている。うるさいのは日本語を話せない一匹だけだ。 「ニャア!ニャア!」 「なんだお前は!中身が何だったとしてもお前には猫に小判だぞ!絶対やらんからなっ!」 「フーーーっ!」 喧嘩しているようだが、どうやらおじさんに懐いたらしい。さっきからずっとべったりくっついている。猫好きの僕は嫉妬しないでもない。 「なぁ、肉まんでも食べるか。寒くて敵わん」 確かに、寒い。それに落とし主は一向に現れる気配を見せない。これは長丁場になりそうだ。 「……おじさんの奢りなら」 「……チッ」 「ニャア!」 「あぁもう!分かったよ!三つ買ってくるから待ってろ!」 「あざっす!」 「ニャー」 猫とこっそり目配せし、にんまり。おじさんはのそのそ立ち上がると、財布の中身を確認し苦い顔をした後、夜の闇に溶けていった。 「お酒は買っちゃダメですよ!おじさん酔うと面倒だから」 「うっせぇ!」 暗闇から怒声が返ってくる。やがて彼の足音も聞こえなくなった。
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