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「楽しみだねぇ、肉まん」
「ニャア」
僕は猫を抱き寄せる。うん、暖かい。これが生き物の温もりってやつか。長く一人暮らしをしていると、人の温もりや息遣いを感じるだけで心がきゅっとなる。僕らは肉まんを待ち続けた(おじさんを待っていたわけではない)。
「なぁ、猫。お前どっから来たんだ?」
「ニャア」
「そうかグアムか。俺も行きたいよ」
「ニャア」
「肉まん遅いな」
「ニャア」
「……眠い。お前はいいな、夜行性で」
時計を見ると、3時半だった。明日は休みとはいえ、この時間まで起きているのは正直キツい。何やってんだろ、自分。馬鹿みたいなことに一生懸命になって。でも、帰ったところでどうせ気になって眠れなかっただろうな…。
そんなことを考え、微睡む僕。猫が優しく「にゃあ」と鳴いた。膝の上のもふもふが温かい。僕はそこに顔を埋めて眠りに落ち──────
「いってぇ!」
顎を膝に強打した。猫がいるはずの場所には、僕の汚れた服があるのみだった。はっとして横を見る。するりと僕の膝を抜け出した猫は、アタッシュケースを見つめ、「ニャア、ニャア」と鳴いていた。しかし、それよりも僕の気を引いたのは、その横に立っていた人物であった。
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