ブラック・ボックス

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「……誰」 長い髪。はためくスカート。緩やかにくびれたウェストのシルエットだけで分かる。少なくとも、この人はおじさんじゃない。 その人物はつかつかと歩を進めると、街灯の下に姿を現した。 少女だった。それも、まだ高校生くらいの。 薄いセーラー服が寒そうで、見てるこっちが震えてしまう。そんな僕を、冷たい視線で見下ろす彼女。その顔は、光を浴びてなめらかに光る。 「……あの」 誰ですか。 補導されますよ。 何しに来たんですか。 言いたい事が沢山あるのに、言えない 。彼女の威圧感がそれを妨げるからだ。どうやら、この場では僕に発言権はないようだ。 無言で睨み合う。いや、僕はソフトに見つめているつもりなのだが、相手の目は完全に敵意を持っている。 やっと、彼女が口を開いた。 「あなた、誰……?」 「おいおい、それは僕の質問だよ」 そう言ってキザに肩を竦める。という妄想をするが、実際には肩をすぼめて縮こまる。 「いや、怪しいものじゃなくって……」 あたふたと弁解しながら考える。いや、どう考えても僕って不審者だよな……。彼女は訝しげに眉を顰めると、検めるように僕を見回した。 ああ、おじさん。早く帰って来て…いや、やっぱ帰って来ないで!余計怪しくなる! 少女はため息をつくと、僕に問うた。 「まあいいわ。あなた、この辺で──────」 「ニャア」 彼女の言葉を遮り、猫が飛び出した。何たるタイミング。
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