5人が本棚に入れています
本棚に追加
「……誰」
長い髪。はためくスカート。緩やかにくびれたウェストのシルエットだけで分かる。少なくとも、この人はおじさんじゃない。
その人物はつかつかと歩を進めると、街灯の下に姿を現した。
少女だった。それも、まだ高校生くらいの。
薄いセーラー服が寒そうで、見てるこっちが震えてしまう。そんな僕を、冷たい視線で見下ろす彼女。その顔は、光を浴びてなめらかに光る。
「……あの」
誰ですか。
補導されますよ。
何しに来たんですか。
言いたい事が沢山あるのに、言えない 。彼女の威圧感がそれを妨げるからだ。どうやら、この場では僕に発言権はないようだ。
無言で睨み合う。いや、僕はソフトに見つめているつもりなのだが、相手の目は完全に敵意を持っている。
やっと、彼女が口を開いた。
「あなた、誰……?」
「おいおい、それは僕の質問だよ」
そう言ってキザに肩を竦める。という妄想をするが、実際には肩をすぼめて縮こまる。
「いや、怪しいものじゃなくって……」
あたふたと弁解しながら考える。いや、どう考えても僕って不審者だよな……。彼女は訝しげに眉を顰めると、検めるように僕を見回した。
ああ、おじさん。早く帰って来て…いや、やっぱ帰って来ないで!余計怪しくなる!
少女はため息をつくと、僕に問うた。
「まあいいわ。あなた、この辺で──────」
「ニャア」
彼女の言葉を遮り、猫が飛び出した。何たるタイミング。
最初のコメントを投稿しよう!