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おまけ
「……ふぅ」
少女は大事にアタッシュケースを抱え、夜道を歩く。やば、制服で来ちゃったから、補導されるかも。少し歩調を早めた。
「でも良かった……これがなかったらどうしようかと思った」
ケータイを取り出し、メールを打つ。
『見つかりました。』
ケータイを閉じようとしたが、直ぐに返事が来た。見ると、にっこりマークの絵文字。どうやらほっとしているようだ。グーサインを画面に返す。
「ニャア」
振り向くと、さっきの猫がいた。たたたっと駆け寄ると、足元でゴロゴロ喉を鳴らす。まるで、何かをねだっているようだ。
「ふふっ。賢い猫ちゃん」
少女は思わず微笑む。猫の頭を優しく撫でると、アタッシュケースを地面に置いた。続いて、スカートのポケットから金色の鍵を取り出す。
「いいわ、特別ね──────」
口にライトを咥え、慣れた手つきで鍵を開ける。そして、重いケースの蓋を開けた。
「ちょっとだけよ」
中の物体をひとつ、胸ポケットから取り出したナイフで削ってやる。それを掌に載せると、猫は嬉しそうに飛び付いた。
「猫に鰹節……か。鍵さえ掛ければ中身は分からないと思ったけど、油断しちゃダメね」
そう呟くと、もう一度名探偵の頭を撫でた。空は微かに明るくなってきている。
朝はもう近い。
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