ブラック・ボックス

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おじさんは痺れを切らしたようにケースを奪い叫ぶ。 「……いいか、いくぞ」 ゆっくりとケースを揺すり出した。 ゴン。ゴロン。ゴロン。ゴトンゴトン。 んん?これって────── 「…どうだ、分かったか?」 僕は胸を張って答える。 「愚問ですね」 そうして一つ咳払いすると、声を低めて言った。気分は小林少年だ。 「まず、これは札束じゃない。こんな鈍い音はしないし、四角いものはこんなに転がらない」 「あんた、札束持ったことあるのか?」 「札束どころか最近は諭吉とも会ってませんね」 怪訝そうな顔のおじさんを置いて、僕は話を進める。 「そして、金塊でもない。このケースは確かに重いが、あんな音を立てるだけの金が入っているとしたらそれは軽すぎる。つまり、このケースの中身は金塊でもないのだ!」 僕はびしっとケースを指さす。 ──────決まった……!かっこよかったかな? 神妙な顔をして聞いていた彼を見ると、片頬を上げ、ニヒルに微笑んでいた。 「で、ずばり、中身は何なんだ?」 試すように言うおじさん。固まる僕。 「その──────えっと、つまり……」 しばらく考えたあと、僕は観念して言った。 「ずばり、『なんかごつごつした感じのおっきい何かの塊っぽいやつ』です……」 切れかかってチカチカしてる街灯の下、こんな間抜けなセリフを言う僕は、多分最高にかっこ悪い。 「ひょっひょっひょ、お主もまだまじゃの」 突然聞こえた気持ちの悪い声に、ギョッとして顔をあげる。目の前でおじさんが勝ち誇ったような笑みを浮かべ、僕を見ている。 「わしゃ知っとるでな。知りたいか?」 ちょっと顎を上げて気取っているのがとっても腹立たしい。 『何だこいつ?その口、ア〇ンアルファで止めてやるわ!』というセリフを一生懸命飲み込みつつ、「お願いします」と言う。
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