ブラック・ボックス

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「ふっふっふっ……」 今どき戦隊アニメの悪役でもこんな陳腐な笑い方しない。 「転がる音、そしてこの重み……これが酒じゃなくてなんだってんだ?え?」 ………。 分かったことがある。 こいつ、かなり酔ってる。 「おい、あんちゃん。どうした。びっくりして言葉も出ないのか。はっはっはっそうかそうか」 バシバシと肩を叩いてくるその手を払い除け、僕は叫んだ。 「おじさんこそ、よく考えて下さいよ……。アタッシュケースに酒瓶、入れます?」 「入れないとは限らん」 不貞腐れたように答えるおじさん。 「こんな鈍い音します?」 「…しないとは限らん」 おや、ちょっと威勢が無くなってきたぞ。ダメ押しにもうひと押し。 「液体だったら、振ったら分かりますよね」 「……」 彼は黙りこくってしまった。夜風に当たりだいぶ酔いも覚めてきたのだろう。 「確かに、そうとも考えられるな」 何故素直に認められないのだろう。歳を取ると妙なプライドが生まれてくるのだろうか。そんなことはさておき、これで振り出しに戻ってしまった。最初の疑問が再び僕らに降りかかる。
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