ブラック・ボックス

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にわか雨と珍事件は、いつも突然降ってくる。 長年の経験で培ったそんな教訓は、やはり間違っていなかった。 僕は恐る恐る目の前の箱に手を伸ばす。街灯の下に忘れられたように置かれたアタッシュケースが、早く開けろ、開けてみろとばかりにピカピカ妖しく光っている。 表面をそぉっと撫でてみる。アルミの表面は無機質に冷たい。僕の吐く熱く荒い息が、深夜の空に白く上っていく。 「まさか……な」 アタッシュケース。この単語から連想される中身はただ一つ。刑事ドラマの見過ぎなのか、はたまた僕が金にがめついからなのか、いや、そんな事はどうでもいい! 取手を握り、軽く持ち上げてみる。 「……っ!」 ……つもりが持ち上がらない。重い。重いぞ……! 体勢を整えたのち、今度こそ両手でしっかりとそれを持ち上げる。ずっしりと重い。1000万……いや、5000万はあるぞ…。火照る息を抑えながらも、思わず笑みがこぼれる。こんな事ってあるのか?いやない!これだけあれば、家、車、叙々え……いやいや何考えてんだ、俺!ブンブンと首を降る。落し物は警察に届けましょう。ダメ、窃盗。これ絶対。そんなことは小学生でも知っている。いやしかし、これは連日真っ当に生きている俺に神様が与えてくれたご褒美なのではないだろうか?そうだ、きっとそうに違いない。ありがとう神様。ありがとう日本。僕は天を仰いだのち、有難くアタッシュケースを頂戴しようと手を伸ばす。が、それは一つの言葉によって遮られた。 「やあ、兄ちゃんや。どうしたんだい、それ」
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