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episode 2
その後はお店の閉店時間を待たず、龍也はバイトを上がることになった。
あとは家に帰って二人でお祝いしなさい、だそうだ。
例のごとく「明日は休みね!」とママの声を背中に受けつつ店を後にした。
家に着くと玄関でお帰りとただいまのキスをする。
もらった花束をリビングテーブルに飾り付けていると、キッチンにいる理人から声がかかる。
「ちょっと飲もうか」
そう言って理人はボトルとグラスを手にし、龍也をソファの方へ促す。
ポンっと小気味いい音がして栓が抜かれると、甘くフルーティーな香りが漂ってきた。
「お酒、初めてでしょう?甘口のスパークリングワインだから龍也にも飲めると思うよ」
そう言ながらグラスにワインを注ぎ、片方のグラスを差し出してくる。
それを受け取りチンっと軽くグラスを交わすと、ゆっくりと口をつける。
マスカットやピーチの華やかな香りと甘味が口に広がっていく。
「美味しい」
シュワシュワとしたフルーツジュースのようで飲みやすいが、あとからしっかりアルコールを感じる。
同じものを飲めるようになった、ということを感じて嬉しくなった。
初めてのお酒を楽しむように少しずつグラスを傾ける龍也と反対に、理人はまるでジュースでも飲むような速さでグラスを空けた。
ソファから立ち上がるとキッチンに向かい、すぐに氷の入ったグラスとウィスキーの瓶を持って戻ってくる。
美味しいけど俺にはちょっと甘いと笑い、グラスに飲みなれたウィスキーを注ぎ、カランと音を立てて口を付けた。
深く甘い香りが漂う。
ゆっくりとグラスを傾け、喉仏が上下するのを隣で盗み見る。
ただお酒を飲んでいるだけのその姿にも色気を感じてドキリとした。
グラスから口を離した理人と目が合い咄嗟に逸らす。
見惚れていたのがバレた気恥ずかしさで顔を俯けていると、理人が身体を寄せてくる。
「どうしたの?」
そう言って笑いながら頬にキスを一つ。
瞳を見つめると今度は唇に。
甘く苦いウィスキーの味。
角度を変え、ねっとりと絡んでくる舌に舌を這わせる。
唇を離すと熱をはらんだ瞳と目が合う。
「ベッド、行こうか」
耳元で低く甘い声音でささやかれ、俯いてうなずくと身体を抱きかかえられた。
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