プロローグ

2/2
34人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
  「アキラ!」 ――雑踏の中、はっきり聞こえた。 俺の名前を呼ぶ声。   振り返ると 長い長い間、思い焦がれている姿があった。   名前を呼び、向かってくる相手に 駆け出したい衝動を抑え、立ち止まったまま近づき触れる時を待った。 手を広げ、掴もうとした瞬間、横をすり抜け 通り過ぎ、去っていった。   *   *   *   電子音と共に、体を揺すられ目が覚めた。 (また、あの夢だ……) 何度も見る、同じ夢。 目覚めは、最悪。 体を揺すっていた腕は、電子音を止めてくれた。 鬱々とした気分を切り替えるように、何とか半身を起こした。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!