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「アキラ!」
――雑踏の中、はっきり聞こえた。
俺の名前を呼ぶ声。
振り返ると
長い長い間、思い焦がれている姿があった。
名前を呼び、向かってくる相手に
駆け出したい衝動を抑え、立ち止まったまま近づき触れる時を待った。
手を広げ、掴もうとした瞬間、横をすり抜け
通り過ぎ、去っていった。
* * *
電子音と共に、体を揺すられ目が覚めた。
(また、あの夢だ……)
何度も見る、同じ夢。
目覚めは、最悪。
体を揺すっていた腕は、電子音を止めてくれた。
鬱々とした気分を切り替えるように、何とか半身を起こした。
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