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明,怜 27歳
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「アキラ、ネクタイ」
「あぁ、サンキュー」
手渡そうとしたネクタイを受け取らず、首を突き出した明の頭を怜がはたく。
「自分でしろよ」
「いいじゃん、久々に会うんだし」
叩かれた振動で少しズレた眼鏡以外、全く動じず引かないまま、笑顔で明は怜に顔を近づけた。
「こんな朝の忙しいときに来なくなったって……」
ぶつぶつ文句を言いながらも、怜は明の首にネクタイを掛け、結び始めた。
「確かにホテルからそのまま出勤した方が楽かもだし、実家に一旦帰った方がいいかなと思ったけど……一瞬でも会いたかったし。今日の夜帰ってこようかと思ったけど、一緒に朝飯食いたかったし」
目の前に来た怜の髪をかき上げ、明は額に頬にキスをした。
「もーーーーー!ふざけんな!僕だって用意まだ」
怜は顔を赤らめながら、結び終えたネクタイを引っ張った後、明の胸を突き飛ばした。
「アキラ、いってらっしゃい」
「レイも、すぐ出るんだろ。気をつけて」
「あぁ。そしたら夜」
怜は少しだけ微笑んで、玄関先の明にキスをした。
「あーーー!ヘトヘトだったけど……元気出たーーー!
なるべく早く帰ってくる!」
明は笑いながら出掛けていった。
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