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掻き抱けない代わりに、絡めた明の指に力が入った。
「なあ、今から風呂入らないか?」
「え、一緒に?」
「あぁ」
急に思い立った事だけれど、明はあくまで軽く告げた。
不安がって元気が無い怜を励ましたい,保護ってやりたいなんて本心がバレたら、プライドの高い怜をたちまち傷つけてしまう。
そんな素振りは出さない。
例え気づかれていたとしても。
出会って性格が解った高3の頃から、常套手段だ。
大学を卒業して、藤本も近くにいない今、こんな弱い面を見せてくれるのも自分の前だけだと、明は長い付き合いで自負している。
そんな綺麗事だけでなく、怜に、触れたい。
今はその想いだけで頭が一杯だ。
「片づけは?」
「んなもん、後で良い」
「飯作りながら、お湯入れてたし」
その時は、一緒に入ろうとは思ってなかったけれど、結果よかった。
「無駄に、気が利くだろ」
「フッ……」
怜はようやくいつもの笑顔を見せた。
「アキラ、今日疲れてんじゃないのかよ」
「疲れてるけど……疲れてる程、怜が恋しい。あ、また風呂入る事になるな」
怜に反対の手で、握りしめている手を笑いながら叩かれた。
暗に風呂の後の行為を、二人とも予感していた。まだ、入ってもいないのに。
「ほら、行くぞ」
明が先に立ち上がり、怜の手を引く。
「一緒に風呂入るのって、めちゃくちゃひさしぶりじゃないか?」
「27にもなって、一緒に入んのかよ……」
「27もなにも、入るって。ずっと」
「なんだ、それ。バカ」
脱衣所へ向かう途中、リビングからまだ出きらない所で、明は怜のネクタイをはずし、シャツのボタンを器用にあける。
悪態をつきながらも、されるがままに脱がされて、明の脇腹のシャツの裾をそっと握り寄り添ってくる怜が愛しくてしょうがない。
癖のない髪を指に絡ませてガシガシ洗ってやろう。
怜の中の不安や孤独を一緒に洗い流したい。
「早く、入ろうぜ」
裸にサポーターとボクサーブリーフと靴下姿だけの怜を明は抱き上げ、リビングを後にした。
怜は黙ったまま、明にしがみついていた。
-明と怜27歳 おしまい-
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