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僕もリサも地球生まれの地球育ちだ。しかし研究所の仕事で月へ行くことになり、そこで研究をしている間に、僕らの故郷は姿を消した。
僕の、最愛の人を乗せたまま。
それから僕は、きっとどこかにいる最愛の人を探して、この広大な銀河を旅し続けている。リサはなぜか僕のことを自分の玩具か読みかけの小説みたいに思っていて、楽しむためだけに後をついてくる。大変ありがた迷惑な存在である。
リサとは月での研究所の同僚で、彼女の頭脳は地球1ではないかと思うくらい素晴らしいけれど、性格は子供みたいというか、無邪気に捻くれているというか、生来の曲がった根性というか、とにかくそういう人だった。
四六時中一緒だと疲れ切ってしまうが、果てのない暗闇を漂う地球人は2人きりかもしれないと思うと、たまには憎まれ口もいいかなと思ってしまうので、振り切れずにいる。
「あら、この星は鉱石だらけね。見て。遠くにヒマラヤみたいな山がある。この距離であの高さ…1万メートル以上ありそうね」
「鉱石も深い青色だけど、鉱石と鉱石の間にある土も青っぽいね」
「ラピスラズリの色だわ。あなたにとっては幸先がいいんじゃないの、漣」
「え? なぜ?」
理由を聞く前に、彼女は宇宙船の方に戻って行ってしまった。1つウン百万円もする検査キットを取りに行ったのだろう。月の研究所にあったものだ。しれっと借り出すのだからちゃっかりしているというか、極太の神経というか。
僕は1人でラピスラズリの惑星を探索することにした。
群青色の鉱石達はとても硬くて、足場はしっかりしている。眺めていると、どこまでも深い青色に吸い込まれそうになる。
地球の青さとはまた違う、もっと静かで、冷たい青さだ。
群青色が僕の心を寂しく染める。
僕の温かで賑やかで友達みたいな地球はどこに行ってしまったのだろう。
僕の最愛の人は、一体どこへ。
不意に何か聞こえた気がして振り返る。
珍しく頭を振り乱して走っているリサの姿が、目に映った。
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