ラピスラズリの海

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ラピスラズリの海

 ハルと初めて会ったのは高校1年生の時。同じクラスになったのだが、相手はクラスの中心人物、こちらはクラスの日陰者。1年間、挨拶以外の言葉を交わしたことはなかった。  会話らしい会話をしたのは、高校2年生に進学し、また同じクラスになった時だ。 「漣って名前、合ってるよね」  難しいとか珍しいとか、変わってるとか合わないという評価は受けたことがあるが、『合っている』と言われたのは初めてで驚いた。僕の名前を知っていることにも驚いた。  その時から何となく、彼女のことを目で追うようになり、必然的に視線が交錯するようになり、そこから会話が生まれ、やがてそうなることが当然だったように付き合うようになった。  笑顔の絶えないハルは僕の太陽で、僕は彼女の月だった。彼女がいて僕は輝き、彼女を中心に僕は回っていた。  太陽のいない月は、真っ黒な、空気が入っただけのボールだ。広大な闇の中で動くこともできず、ただ、在るだけ。  ねぇ、ハル。君に会いたい。  君に会うためなら神に祈るし、悪魔と契約だってする。    だから、ねぇ、会いたい。  会いたいよ。
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