4人が本棚に入れています
本棚に追加
ラピスラズリの大地
氷の金槌で殴られたような衝撃で目が覚めた。目の前には髪を振り乱したリサがいた。覗き込むような体勢の彼女を見て、自分が横たわっていることに気づく。彼女の背後にはラピスラズリの空が見えた。
「何をそんなに睨んでるんだい」
そう言ったつもりだが、ちゃんと声が出たのかは、なぜかわからなかった。
「あなたは本当に抜けてるわね、漣。私がいなかったら死んでたかもしれないのよ。呑気な顔して、腹が立つったら」
リサの声が少しくぐもって聞こえる。ぼんやりとする視界をはっきりさせようと目に力を入れると、彼女はチュッパチャップスサイズの酸素ボンベをつけていた。面白いことに僕もつけている。どうやら寝ながら酸素ボンベを装着する術を僕は身につけたらしい。よく見ると、フェイスシールドもつけていた。特技として今度誰かに紹介しよう。
「また馬鹿なことを考えてるんじゃないの、漣。もう助けてあげないわよ。あなた、昏睡状態だったんだから」
「昏睡? 僕が?」
リサは呆れたように大きく息を吐いた。ようやく髪が振り乱れていることに気付いたのか、手櫛で長くて茶色い髪を綺麗に梳かしている。
「この星の鉱石が青いのは、かなり高濃度のコバルトが溶けて混じっているせいみたい。綺麗な青だと思ってたら危険なの。コバルトは私達にとっては害にもなる、失明することだってあるんだから。
あなたは吸いすぎたのね。ここの大気にも微細なコバルトが含まれてる。まあ、対策してれば大丈夫。宇宙船に持って帰って燃料の一部にしましょ」
まだぼんやりとしている頭に彼女の早口と難解でポジティブな言葉は焼け石に水と同じだった。
最初のコメントを投稿しよう!