第一話  叔父さんの恋

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 しかもあろうことか・・つい先週、ベルちゃんは天才児だと言う事が判明した。  切っ掛けは。以前に母方の従兄たちが通っていた天才児クラスに、ベルちゃんも通っていると知ったことだった。ある日。幼稚舎から帰って来た花梨が、自分の事のように僕に自慢タラタラで語ったのだ。  「ベルちゃんってねぇ~、IQがすっごく高いのよぉ。蓮や湊が前に通ってた、あのおんなじ天歳児のお教室に通ってるんだからねぇ~」、って自慢した。  そこはファラ教授という数学者が開いている個人塾。彼女はN大学で教鞭をとっているイギリス人の大学教授で、そろそろ六十代に突入するオバサンだが。そこに通っていた僕の母方の従兄の双子は、揃って恐るべき知能指数の持主で。  彼らと比べられちゃ、僕の分が悪い。  双子の兄弟は兄が(れん)、弟は(みなと)と言う。母の兄の黒田(くろだ)大樹(ひろき)が別れた奥さんとの間に作った息子で、僕よりも四つ上の十四歳。  中学校の二年生だ。  彼らがまだ小学校に通ういたずら小僧だった頃は、四つも年下でまだいたいけな幼児だった僕を、そりゃぁ虐めまくったものだ。奴らの標的にされ続けた僕の怨みは骨髄。僕は今でも奴らの事を、「悪魔の双子」と呼んでいる。  その双子の天才は、どういう訳か有名私立ではなく公立の学校に通っている。祖父の彦助(ひこすけ)爺さまの命令だそうで。  それが黒田家の男に生まれたモノに課せられた伝統なのだという。大樹叔父さんも、彦助爺さまも、資産家の家に生まれたくせに公立の学校に通ったそうだ。  「世の中にはなぁ、色んな職業の人たちがいるんだよ。暮らし方も千差万別、選ばれた者だけが通う学校にいては、見えるモノも見なくなる」  「世間知らずでは、家は護れんゾ」  母の実家に遊びに行くたびに、彦助爺さまは僕に説教をする。もう耳タコ!  聞き飽きた。  そりゃぁ、悪魔の双子ほどじゃないが。僕だって付属小学校じゃ、優等生だぞ。いっつも校内学力テストでは、同学年の3番以内をキープしているんだからな。と、心の中でチョット反論する。  「それに、僕の有馬家だってそれなりに資産家だ。何たってあの我儘ものの華を、親父の収入だけで養っているんだから」、と心の中でもっと小さく反論。  でも笑顔を作って、会話に復帰した。  「でもさぁ、母さんは聖女学園だったじゃないか。有名私立のお嬢様学校だよね」、すかさず突っ込みを放った。  「アレは女の子だからな。悪い虫が近づかないように、防虫効果のある温室に入れておく必要があったんだよ」  偶々早く帰って来た大樹叔父さんが、横から口を出した。
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