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肩の上で切り揃えた豊かな黒髪、その髪に飾った菫色のリボンが揺れる。バレエのチュチュのような真っ白なレースのドレスに包まれた少女の姿が、セピア色の写真の中に写っていた靜恵お祖母さまの幼稚園児だった頃の、ピアノの発表会の姿と重なった。
「なぁ蓮、ソックリだよなぁ」
「あぁ、まるでお祖母さまの幼いころにタイムスリップして、あの写真の中の少女に出逢ったみたいだ」
稲妻に打たれたような衝撃だった。
「六歳児かぁ。未来の妻に迎えるには問題ない年の開きだ」、蓮が呟けば。
「だけど蓮、あの可愛らしさだ。他の男が目を着けないとは限らないぞ」
湊が警鐘を鳴らす。
将来的にどちらの妻にするかは未定だが、他の男に捕られるのは認めがたい。
「なぁ、湊。将来的に、僕と君で妻をシェアする選択肢も有りだな」
蓮が呟けば。
「うん、それも有りだ」と、湊も悪魔的な同意を示す。
「そうと決まれば、あの子とお近づきになるのが先だな」
「オイ、湊。未来のための捕縛を開始するぞ」
二人は悪魔の微笑みを交わし合うと。
「君、お名前は?」
「明後日の予定がなければ、僕たちのお祖母さまが開くお茶会に、ファラ教授と一緒に来れないかなぁ」
さっそく、お誘いの言葉を噛ましたのである。
(そのままでも、僕には十分に拙い展開だったのだが。もっと拙い事実まで奴らに聞かれてしまったのである。裕君には最悪の展開だった)
「エッ、寿々ちゃんの通ってる幼稚園って言うのは、聖女学園の幼稚舎なの。もしかして、有村花梨ちゃんを知ってるかなぁ?」
「僕達の従妹なんだけどね」
見事な誘導尋問だった。可愛らしい仕草で頷く寿々ちゃん。
「あたしと花梨ちゃんはね、とっても仲良しなの」
「大事なお友達なのよ」・・うふっと、可愛く笑う。
「天使だ」、湊が呟く。
横で蓮が、眩しそうに目を細めた。
「ねぇ、寿々ちゃん。花梨ちゃんのお家にも、遊びに行ったりするの?」、優しく問いただすのは湊の役目だ。
「あぁ、そうか」、と寿々ちゃんは気が付いた。
「もしかしたらお兄さんたちが、裕ちゃんが話してくれた悪魔の双子さんなの?」
(何てことを寿々に吹き込むんだ。あいつめ!ただでは置かないぞ・・と、双子の悪魔がうなり声をあげる)
ぎりっと、湊は歯噛みすると。
横に立つ蓮が、もっと聞き出せと促した。
湊が頷く。
「花梨ちゃんのお兄さんにも、寿々ちゃんは会ったことがあるんだね?」、追及の手を緩めることなく核心に迫った。
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