第一話  叔父さんの恋

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 「うん、裕ちゃんはね。いつも寿々にとっても優しくしてくれるのよ」  「大好き」と、そこで寿々が爆弾を投下した。  「アイツめ。油断も隙もない奴だな」  今度は蓮が歯ぎしりして唸った。  「裕は排除するしかないな」、蓮がキツイ声で判決を下すと、湊も頷く。  それは僕の知らないところで運命が決まってしまった、不幸な午後の出来事だった。  そんな訳で。  シャワーを浴びて着替えを済ませた悪魔の双子は。サンルームでお茶を楽しむ僕に、一気に襲いかかった。  「ヤァ、誰かと思えば我が従弟どのじゃないか。ちょっと話があるんだけど、書斎まで来てくれないかなぁ」  蓮が、僕の二の腕をむんずと掴んだ。  「男同士の話がありますのでね、ちょっと裕君をお借りしますよ。華叔母さま」  慇懃な湊の声が、部屋に流れる。  異変に敏感な花梨が俯いて、裕君をすばやく見捨てた。この双子に関わると、いつも碌な目にあわないと知っているのだ。  「まぁ、素敵。男同士のお話しなんて、何てエキサイティングなの」  「ね、お母さまもそう思うでしょ」、能天気な華の声に、蓮が含み笑いを洩らした。  「ほどほどにね、蓮と湊」  さすがは靜恵お祖母さまだ、シッカリと釘を刺された湊がクスッと笑う。  そのまま僕は引き立てられて、書斎に連行された。  書斎の扉の閉まる音が、心臓に重く響く。  いきなりだった。  「お前、早蕨寿々から手を引け」、と蓮が言えば。  「あの()はね、僕たちの未来の花嫁候補に決まってるのさ。目障りだから、寿々の側から消えろ」  教えて遣ると言って、湊が凄んだ。  「やだなぁ、お兄ちゃんたちは何を言ってるの。ベルちゃんはまだ六歳の、幼稚園児なんだよ」  「それとも・・二人ともロリコンなの?」  ちょっと首を傾げて、揶揄する攻撃に転じてやった。だれが聞いたって、十四歳の中学二年生が六歳の幼稚園児に惚れるなんて変だろう。  危ない話にしか聞こえない。  「つべこべ言うな。たかが八歳の歳の差なんてな、僕たちが二十六歳の大人になれば何でもないことなんだぞ」  「その時は寿々も十八歳だ、法律でも婚姻が許される年齢に達する」  「そうだ。たかがあと十二年の事だ」  言ってることが、ますます変だろう。  僕は思わず後退った。
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