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「うん、裕ちゃんはね。いつも寿々にとっても優しくしてくれるのよ」
「大好き」と、そこで寿々が爆弾を投下した。
「アイツめ。油断も隙もない奴だな」
今度は蓮が歯ぎしりして唸った。
「裕は排除するしかないな」、蓮がキツイ声で判決を下すと、湊も頷く。
それは僕の知らないところで運命が決まってしまった、不幸な午後の出来事だった。
そんな訳で。
シャワーを浴びて着替えを済ませた悪魔の双子は。サンルームでお茶を楽しむ僕に、一気に襲いかかった。
「ヤァ、誰かと思えば我が従弟どのじゃないか。ちょっと話があるんだけど、書斎まで来てくれないかなぁ」
蓮が、僕の二の腕をむんずと掴んだ。
「男同士の話がありますのでね、ちょっと裕君をお借りしますよ。華叔母さま」
慇懃な湊の声が、部屋に流れる。
異変に敏感な花梨が俯いて、裕君をすばやく見捨てた。この双子に関わると、いつも碌な目にあわないと知っているのだ。
「まぁ、素敵。男同士のお話しなんて、何てエキサイティングなの」
「ね、お母さまもそう思うでしょ」、能天気な華の声に、蓮が含み笑いを洩らした。
「ほどほどにね、蓮と湊」
さすがは靜恵お祖母さまだ、シッカリと釘を刺された湊がクスッと笑う。
そのまま僕は引き立てられて、書斎に連行された。
書斎の扉の閉まる音が、心臓に重く響く。
いきなりだった。
「お前、早蕨寿々から手を引け」、と蓮が言えば。
「あの娘はね、僕たちの未来の花嫁候補に決まってるのさ。目障りだから、寿々の側から消えろ」
教えて遣ると言って、湊が凄んだ。
「やだなぁ、お兄ちゃんたちは何を言ってるの。ベルちゃんはまだ六歳の、幼稚園児なんだよ」
「それとも・・二人ともロリコンなの?」
ちょっと首を傾げて、揶揄する攻撃に転じてやった。だれが聞いたって、十四歳の中学二年生が六歳の幼稚園児に惚れるなんて変だろう。
危ない話にしか聞こえない。
「つべこべ言うな。たかが八歳の歳の差なんてな、僕たちが二十六歳の大人になれば何でもないことなんだぞ」
「その時は寿々も十八歳だ、法律でも婚姻が許される年齢に達する」
「そうだ。たかがあと十二年の事だ」
言ってることが、ますます変だろう。
僕は思わず後退った。
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