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グイッと、蓮が前に出る。
「いいか、アレは僕達のモノだ」
湊が、僕の後ろに回った。
「明日のお茶会には来るなよ。寿々をお祖母さまに紹介する大事なセレモニーなんだからな」
僕の首根っこを掴むと、「言う事を聞かないと、後悔することになるぞ」と脅した。
悪魔どもめ!
だが、そこでハタと僕は気づいた。
「寿々ちゃんが十八歳になるまでに、まだ十二年もあるじゃないか。今は引いた振りでやり過ごし、忍び寄る機会を狙えば良いだけだな」、心の中でその考えを反芻した。
たしか大樹叔父さんも、大学時代にイギリスに留学していた事があったはずだ。きっとこの悪魔の双子も何処かに留学するだろう。いつもお神酒徳利のように一緒の行動をとる二人だ、留学も一緒に行くに違いない。
「それこそビックなチャンスでは無いか。それまで待つくらい、なんでもない事だな。ヘン、果報は寝てまてだ!」
僕は悪魔の双子を欺く事にした。
「分かったよ。ベルちゃんは花梨の友達だけどね。それ以上でも、それ以下でもないと誓うよ」
人畜無害の笑みを顔に貼り付けると。そそくさと書斎を出ようとしたのだが。
蓮がまた、僕の腕を掴んだ。
「その【ベルちゃん】と呼ぶのもやめろ」
「許さん」と、蓮が唸った。
「当然だな」
湊が同意。
蓮が掴んだ手に力を込めた。
痛さに呻く僕を見て、微かな憐みの表情を浮かべ嘲笑う悪魔の双子。殺してやりたいほど憎いが、逆らう勇気が湧いてこない。
二人が悪魔の笑みを交わしあうのを目にして、さすがの僕も震え上がった。
「よし、話は付いたな」
「うん、そうだね。それに裕の頭の程度では、寿々ちゃんの相手は無理だしな」
湊がグサッと、僕の痛いところを突いた。
その日は、惨敗。
涙を呑んで撤退した僕だが。
この巻き返しを図るのは、双子が留学してからだと肝に銘じている。
(覚えていろよ!江戸の仇は長崎で討ってやる)
サンルームに戻った双子の機嫌のよさは、まさにキラキラ光るダイアモンドが如し。
見事に光り輝いていた。
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