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玄さんはというと、元気に自分の牧場を営んでいる。相変わらず毎日のように僕の家に来ては、僕の息子と遊んでくれたり、レストランの手伝いをしてくれている。
かあさんが亡くなった時は、僕と同じように悲しみ、違う理由では僕以上に悲しんでいたに違いない。それでも、悲しみにくれる僕を、力強く励ましてくれたのも玄さんだった。
肉親のような付き合いをしてもらっている良き隣人の玄さんは、いまだに――独身のままだ。
そんな僕の人生で、ただ一つ、心残りなのは、もう一度、おじさんに会ってお礼がしたかったということ。
それに、――また、おじさんの空飛ぶソリに乗りたい。
月が出るたびにオレンジ色の星を探してた時期があったけれど、一回も見つけることはできなかった。
何度も目を閉じて、おじさんのことを思い描き、ゆっくりと目蓋を開けてみても、同じだった。
月に向かって、「おじさん、会いたいよ!」と叫んでみても、閃光と共に僕の前に現れることはなかった。
だけど僕は、クリスマスの前日の夜に高橋のおじさんが、二頭のトナカイ、”ロン”と”リン”がひくソリでやってきて、あのキラキラと輝く星型の“気づき”の粒をプレゼントしてくれていることを知っている。
だから必ずその日は、星空に顔を向け、僕の全てをゆだねている。
感謝の気持ちをこめながら――。
(完)
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
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コロナ禍でのクリスマスはいかがでしたか?
来年こそは、皆さまが笑顔で向き合いながら、温もりのあるクリスマスを過ごせますように、心からお祈りしております。
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