ぼくとキミと、ラララララ

1/7
前へ
/7ページ
次へ

ぼくとキミと、ラララララ

「神様!どうかお願いします!」  ぼくはブンブンと尻尾を床に叩きつけながら、神棚の前で告げた。いつもはボロボロになるからあまり畳の部屋に入るなと言われているけれど、今日くらいは許してもらいたい。しなくてもいい苦労を押し付けられて、イライラさせられっぱなしなのはこっちの方なのだから。 「早いところ、あの面倒くさくて面倒くさくて面倒くさいイキモノをどっかやってください!おちおち昼寝もできません!」  大事なことなので三回言ってみました。ええ、とっても大事なことでございます。  せっかくぼくは、大好きなお父さんとお母さん、飼い犬のぼくの三人家族で幸せに暮らしていたというのに。最近は、“アイツ”のせいで台無しなのだ。叔母さん――お母さんのお姉さんだ――にも事情があるというのはわかっている。急に海外に短期出張に行くことになって、まだ小さな我が子をどうすればいいのか困ってしまったというのも。近所に住んでいたお母さんの家に、二週間だけ我が子を預かって欲しいとお願いしてくるというのも、まあ普通の流れであるのかもしれない。  だがしかし何が問題って人間ときたら、一切合切ぼくの了承を取ってはくれないということだ。ぼくだって、お母さんの息子である。血は繋がっていないけれど、お母さんがぼくを人間の子供と同じように大切にしてくれていることはよく知っているのだ。この家に来て三年。どんどん大きくなるゴールデンレトリーバーのぼくにびっくりしながらも、毎日ごはんをくれて散歩をしてくれて、大好きだよとハグしてくれるのはぼくの特権であったはずである。  つまり、この家に来るということ=一時的にも家族の一員になるということは。家族全員の了承を取るのが筋であるというものではないか。例え断れない立場だったとしても、確認くらい取ってくれてもいいではないかと思う。確かにぼくは犬だから喋ることはできないけれど、それでも人間の言葉はほとんどわかっているのだ。いいよね?と一言でも了承を取る素振りをしてくれたら、それだけでまあ納得しようという気にもなれたというのに。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加