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1* ミラビリス
私は地球より何百光年と離れた惑星で生を受けた。
久しく口にしない故郷の星の名は忘れてしまったので、仮に”ミラビリス”と呼ぶことにする。
ミラビリスもまた、地球が太陽を廻るのと同じように。ひとつの恒星を抱き、自転し、公転していた。
ただし自転の速度は地球よりも遅く、また恒星に近い位置を周回していた。そのため一年という概念においては地球のそれよりもずっと短いのだが、代わりに昼夜それぞれの時間は長く、昼は灼熱、夜は極寒が支配した。
そんな訳で、そのままではおよそ生物が住める環境ではなかった。
ミラビリスにいた頃の私は、地球上のどの生物とも似つかないものであった。変身能力を有し、高い環境順応性を有する点は特筆に値するのだろうが、それをもってしても自然のままのミラビリスでは生きていけない。
そこで我々は有史以来、特殊な加工が施されたシェルターの中で生活していた。
シェルターの起源を、私は詳しく知らない。生まれた時からあったし、その中の世界が全てであった。
うっすら聞き覚えた話によれば、我々の祖先は別の惑星で誕生し、ミラビリスは第二の開拓地なのだと聞く。その惑星ではシェルターなどという無粋な囲いはなく、天高く一面に本物の空が広がっていたそうだ。
私は祖先の功績にはさして興味がなかった(こんなことを言うと、種族の古株連中には不敬だと怒られたものだが、若者の間では珍しくはなかった)。しかし本来の空については、どんな色をしているのだろうかと少しの憧れを抱いたものだ。
それというのも、ミラビリスの空は察しの通りで、極めて人工的な物だからだ。
シェルター外部に取り付けられた光熱発電用パネルにより発電したエネルギーが、生活の源だった。
先述した通り、惑星としての昼夜は地球のそれより長いものであるが、シェルター内の人工的な昼と夜に関しては、地球とほぼ同じ周期を保っていたと思う。
ただしシェルター内には、極めてはっきりとした昼と夜しかない。とにかく明け方だとか、夕方だとか。曖昧な概念はなく、明かりが灯れば昼だし、消えれば夜だった。
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