存在しない駅

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しばらくするとまた拾った榛名さんのスマートフォンの呼び出し音が鳴って、今度は先程とは違う女性の名前がスマートフォンの画面に表示されたけれど、かまわず僕はスマートフォンの応答ボタンをタップして電話に出た。 「もしもし!  先ほど電話した榛名ですけれど、今私は駅の改札を出た所にいるのですが、瀬崎さんはどちらにいらっしゃいますか?」 駅の改札を出たところに僕はいるので、榛名さんの話を不思議に思いながら、 「僕は今、駅の改札を出た待合室の長椅子に座っています。  榛名さんは、今どちらにいらっしゃいますか?」 と率直に聞いた。 すると榛名さんは不審に思ったのか、 「あれ、誰もいないようです。」 と言葉が返ってきた。 僕はどうしたらいいものかと悩んでいると榛名さんから、 「今、どちらの駅にいらっしゃるのですか?」 と聞かれた。 僕は何故そんな質問をするのだろうかと不思議に思いながら、改札上にある看板を見て、 「『静波駅』ですけど…」 と正直に答えた。 すると榛名さんから、 「『静波駅』って、どこの駅ですか?」 という質問が返ってきた。 僕はいったいどういうことなのだろうかと、少し頭が混乱しながら、 「間違いなく、榛名さんが電車を降りた駅だと思いますけれど…」 と返事をすると榛名さんが、 「私が降りた駅は、『静浜駅』です。  もしかして、改札を出た時刻が、午前0時ぴったりではありませんでしたか?」 という質問が返ってきた。 僕が自分のスマートフォンの時刻を確認すると、午前0時30分を過ぎていた。 「はっきりとはわかりませんが改札を出たのは、その時刻かもしれません。」 と僕は答えた。
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