昼の君、夜の君、黄昏の君

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「あれ?夕子?」 呼ばれて振り向くと、朝日さんがいた。 「こんなところで、何してんだー?」 散々、練習した後だろうに疲れた表情はちっとも見られない。 ーーーそうか。彼が来たか。 と思い、スポーツサイクルを降りて、東からうれしそうにかけよってくる朝日さんを私は迎えようと腰を上げる。 「やぁ、夕子ちゃん!」 今度は反対側から声がかかり、振り返る。 なんと、そこには黒塗りの車から降りる星矢さんがいた。 私は慌てて振り返る。 ーーーえ、ちょっと待って、彼も⁈ ニヒルな笑みを浮かべながら、西から颯爽と歩いてくる星矢さん。 「久しぶりだね。星矢」 「あぁ、朝日も元気そうだな」 二人は私を挟んで、向かい合う。 目が笑ってない笑みで。 「あのさ。この際だからさ、はっきりしてもらおうよ」 「実は俺も同じこと言おうと思ってた」 「え、ええ?」 「俺と、星矢どっちにするのか」 「僕と朝日のどちらにするのか」 二人の強い惑星に挟まれた私は目をキョロキョロさせてしまう。 けれど、二人はもうすでに答えを待っていて、自信と覚悟に溢れた微笑みで、私だけをまっすぐ見てくれている。 けれど、結局私はまた困ったように、もじもじと笑ってしまった。 ガサガサガサ! ガサガサガサ! 突然の植え込みの揺れに、緊張した空間が途切れた。 黄金色の獣が目の前を横切る。 「黄昏の君!」 私は思わず、声をあげた。 黄昏の君は、虎柄の立派な雄猫だ。 イケメン二人と並ぶくらい男らしく、猫としても相当モテている彼に、私がそう名付けた。 しばらくぶりの彼は耳をピンっと貼って優雅に伸びをしている。 私は驚かせないようにそっと近づき、その黄金色の背を撫でた。 黄昏の君は逃げはしないが、そのかわり、愛想を振ることもない。 ただ、されるがままに、私の手などそよ風ぐらいにしか思ってない。 私はそういう、何にも干渉されない生き方に惚れていると言ってもいい。 「黄昏の君、元気だった?」 彼からの返事はなく、真っ赤な夕陽を見つめるばかり。 彼の目線の先には、クジラに見えたり、羊に見えたり、焼き鳥に見える雲が流れていた。 中には猫の形のものもある。
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