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なんだ?どういうことだ?と思っていたら、突然画面にノイズが走った。そのまま画像は乱れ、何が映っているのか判然としない。
カメラを叩いたり振ったりするうちに映像は元に戻った。
画面には立ち上がるメグミの姿が。振り返りドアへと向かうその顔には、完璧な化粧がされていた。
「え?」
思わず声が出た。
もう一度最初から再生する。しかし同じところで画面は乱れ、元に戻った頃には化粧は終わっていた。
リビングに戻るとメグミのノートパソコンを引っ張り出した。これには確か動画編集アプリが入っていたはず。それを使えば画像の乱れを何とかできるかと思ったのだ。
アプリを立ち上げ、カメラのメモリーカードを差込む。読み込んだ動画をとりあえず再生してみた。
やはり同じところで画像が乱れだしたので一時停止し、一コマ一コマ確認していく。そうするうち、比較的乱れの少ないコマが出てきた。画像の端々は乱れているが、鏡の前に座るメグミの姿はなんとか確認できる。
それを見つめるうち、背中に寒気が走った。
これは、なんだ?
メグミの頭部が、人のものではないのだ。茶色くて、ごつごつした何か……。
それはどこかで見たような気がした。子供の頃、確かに見た……。
蛹だ。
間違いない。昆虫が、幼虫から成虫へと変態する途中の、サナギ。
つまりメグミは、昼間の姿から一度蛹へとなり、夜の蝶へと化けるのか。
それなら逆はどうだ。夜の蝶から昼間の姿に変る場合も、蛹になるのだろうか?
そんなことを考えるうち、パソコンの画面はオートオフ機能で真っ暗になった。
ブラックアウトした画面に俺の顔が映る。
その背後に、いつの間にかメグミの姿があった。
「見たわね」
振り返ろうとするが体が痺れて動かない。
気が付けば、あたりにはふわふわと何かの粉が舞っていた。
これは……鱗粉?
そうか。メグミは夜の蝶ならぬ、夜の毒蛾だったのだ。
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