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西の空、橙色をまだらに滲ませた深紅の太陽が浮かんでいた。その表面の真ん中より少し下を、真一文字に黒い太い線が横切っている。
ゆっくりと、その黒い線が上下に裂けた。まるで、そう、太陽が口を開けたかのように。
その薄く開いた口から、タラリッといくぶん黄みがかった赤橙色の物が押し出された。
灼熱の色をした太陽から、炎熱の液体のようなものが、あたかも大量の涎のようにドロリと滴りだした。
ダラリ、ダラリ。届いているはずのない地球の重力に引かれて、幾筋かの波形を保って、その太陽から溢れだした粘りつくような物体が、だんだんと地球に向かって垂れ下がってくる。
しばらくして、太陽と地球の間で、それは、音もたてずにドロリッとちぎれた。
空に放り出された物体は、そのまま涙の雫のような形で地球にポタリッと落ちた。
次々と、ポタリッポタリッと、赤い雫が地球に落下していく。
粘り気のある赤橙色の物体が、地球の表面をゆっくりゆっくりと覆っていった。
海が山が、川が森が、街が村が、劫火のごとく灼熱の物体に覆われていく。
長いようで短い、一瞬の間に、全てが。
真っ暗になった。
夜が来た。
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