ルイジアナ

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太陽王にちなんだその州の名はルイジアナといった。貴族的なフランス文化と黒人奴隷が同居する呪われた国。見渡す限り湿地帯が延々と続き、山と呼べるような山もなく、州全域の標高は平均すると三十ヤードほどしかない。 かつて私が放浪者だった頃、差別と偏見に満ち溢れたこの呪われた地に流れ着いたのは一八四五年。今から十二年前のことであった。あの頃の私は今と違って無一文であったが、「退屈」という病に身を焦がしていた大農園主のシャルル・クルーエはそんな私を最大限にもてなしてくれたのだった。ただし、それは私がフランス人を祖先に持つドイツ人とスコットランド人の混血の白人だったからだ。もしも私がアフリカ人を祖先に持つ黒人(ブラック)だったなら、大農園に足を踏み入れたその日のうちになぶり殺されていたとしても決しておかしくはないのだった。 一八四九年のゴールドラッシュを経て西部で一財産を築き上げた私は十二年ぶりに再びルイジアナの地を踏み、大農園主シャルル・クルーエの屋敷を訪れ、午前十時の昼食を囲む食卓の席にいるのだった。 南部の人間の一日の食事は四度に及ぶ。朝食は早朝。昼食は午前十時。夕食は午後三時。夜食は就寝前。それらの四度の食事はかつてのフランス王候貴族の食卓を思わせる豪勢なものだ。
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