第10話 二人の戦士[少年]

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 ジンが休んでいる部屋を退室し、ハルカとシリウスと共にアディティ管轄の学舎内地下にある訓練場へと行く。  護身用の武器についての説明や扱う練習もかねての話のようだ。  ならば俺が居ては集中できないだろうとそばを離れて、街を見回ることにした。  背中に背負った一回り大きめな剣はどこに行っても目立つが、この街では不審がられることはないだろう。  組織アディティ管轄の能力を中心に学ぶ学舎ーープラクティスと呼ぶ者が多いようだが、そこに通うほとんどの者が能力者【アーユル】であり、この街にはそれに所属する若者が多く、人が賑わっている中に武器を身につけている者も見かけるからだ。  とはいえ身につけた黄緑色の着物、そして何より黄緑色の瞳と髪はどうしても目立つ。  それは黄緑色の体内エネルギー【ドーシャ】を上回る黄色い光り熱を持つドーシャの【アタルヴァ】の影響か。  だがそれでいい。マハーカーラがその希少な能力を求めてハルカを狙うというのならば、彼女と同じ特徴の俺がこうしてふらついていれば、接触してくる可能性はある。  ハルカを傷つける相手には用尺なくこの剣【ティソーナ】で叩き切る。  この剣は原型ではないとはいえ、流石は炎の剣というだけあって、光の高熱を持つ膨大なアタルヴァにも耐えられる。  これならばアタルヴァに匹敵する【アーンギラサ】を持つマハーカーラにも対抗できるだろう。  ……だが油断はできない。  マハーカーラの一人ヒラニヤ・テンカ。  奴は剣技が得意なテンカ一族とはいえ、俺でも一度は倒せた相手だ。  その程度の実力にも関わらず、奴はアーンギラサを全身から解放して異形な姿【アヴァターラ】化することで、俺の師であり組織の武装能力者【プロビデンス】の中でも上位の九人【アーディティヤ】のジン・イフリートを負傷させた。
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