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「ボクはさ、あの子が幸せそうだから、嬉しい。」
並んで歩く帰り道。妹は、ポツリとそう呟いた。
「前はさ、あの子、どこか心ここにあらずみたいなところがあったんだ。でも、あの人と一緒にいる時は、本当に幸せーって感じだからさ。ボクは、これで良かったと思う。本当に、お似合いだよ。」
妹はふいにこちらを向いて、僕の目をじっと見てきた。
「きっと、こういう運命だったんだよ。あの子は、あの人と結ばれる運命だった。それはきっと、ずっと前から決まっていて、ボクたちには、どうしようもないことだった。...そう思ったら、お兄も、ちょっとは吹っ切れるんじゃない?」
そう言ってにっこりと笑う妹は、本当に出来た人間なんだと思う。妹だって、彼女と居る時間が減って、残念がっているのを、僕はちゃんと知っている。
だけど、僕はそうは思えない。
あんな不愉快な男より、僕の方が彼女に相応しいなんて、そんな傲慢なことを、心の何処かで考えている。
可能なら今からでも、彼女に僕を想ってほしいと、そんな突拍子もないことを、心の奥底で、居るのかもわからない神様に願っているのだ。
「まぁ、僕も、彼女にはずっと笑っていてほしいかな。」
僕の嘘のない言葉に、妹は安心したように笑った。
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