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八月の嫌になる夏の暑さの中、その日も蝉は鳴いていた。
それはとても唐突で、なんの前触れもなく、僕たちの幸せを奪っていった。
見たくない。
聞きたくない。
耳を塞いでこの場から立ち去りたい。
そんな想いでいっぱいなのに、足が動かない。
友人がこちらを向いた瞬間、友人の手を引き僕の足は走れといわんばかりに全速力で走っていた。
家に帰ってから僕は吐いた。
全速力で走ったからお腹の中が気持ち悪くなったのか、友人のあの知らない顔を見てしまったから吐いたのか。多分、両方だろう。
世の中には見ないほうが良いものがたくさんある。
でも小学生という幼い僕には、その現実はとても辛く、悲しかった。
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