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ドサッ
体に少しの痛みを感じ、ベッドから落ち夢から覚めたことに気付くのに、そう時間はかからなかった。
なんであんな昔の夢なんて…。
「あつっ…」
エアコンの方に目をやると止まっていた。タイマーをしていたので、エアコンはしっかり仕事を果たしたようだが僕の体はカーテン越しに差し掛かる日光で体温は上がっていた。着ていたTシャツは汗ですこし湿っていたのがわかる。
「宏人ー、ご飯よー」
一階から母の声がして「はーい」とだけ返事をして、制服に着替え今日も手放せないマスクをした。僕はあの日からマスク無しでは生きられなくなっていた。
「宏ちゃん、おっはよー」
弾けるほどの元気な声が背後から聞こえた。
顔を見なくても誰だか分かる。僕の事を宏ちゃんなんてあだ名で呼ぶのはこの世で一人だけだ。
「おはよう、咲良」
朝からそんな大きな声を出さなくても聞こえるし、その呼び方はやめろと何度言えば分かるんだ。
そう言いたかったが、やめた。
小学生の時から言ってきたのだが、高校生になった今でもそれは治らない西島咲良。
咲良は他の友人のところへ行きお喋りに花を咲かせていた。
西島咲良とは物心ついた頃から一緒に遊んでいた。いわば幼なじみ。悪く言えば腐れ縁だ。
僕はスタスタと一人教室へ向かった。教室に入り自分の席についた。
「おはよー宏人」
「おはよう」
僕の前の席の椅子を後ろに向け座る親友の塚田遼雅。
遼雅は見た目チャラチャラしているものの、中身は結構真面目だ。初めて会ったのは高一の時で、金髪にピアスって絶対関わりたくないと思った。
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