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「花火なんて久しぶりだねー」
定期テストが終え、晴れて夏休みになった。僕は咲良と神社手持ちで花火をしに来ていた。蝉の鳴き声も止み、蝉以外の虫の鳴き声と花火のチリチリとした音だけが聞こえる。静かな夜に共有された時間はとても心地よく、この時間が一生ものではない事がたまらなく不幸だと思ってしまう。
「小学生の頃もやったよね、あの時はお兄ちゃんも一緒だったっけ」
お兄ちゃん、その言葉を咲良の口から聞くのは何年振りだろう。一瞬ドキッとしたが「そうだな」とだけ言い、キラキラ何色にも変わる花火を見つめた。
僕たちが小学生の頃、咲良には中学生の兄・西島明良がいた。その頃の僕達には中学生がとても大人に見えて僕は明良に憧れていた。「中学生になったら」が当時の僕と咲良の口癖だった。
明良が中学三年の夏休み。僕と咲良と明良でかくれんぼをしていた。僕と咲良はかくれていて鬼役の明良が降参するのを待ちわびていた。だが僕は何分もかくれているうちに一人でいることが不安になりもう自分から出て行ってしまおうという考えがでた。
「明良お兄ちゃーん、どこー?」
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