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夏の太陽が沈むのは少し遅い。
まだ午後七時過ぎた頃外は少し明るかった。図書委員の当番で気づいたら寝ていたようだ。先生も起こしてくれれば良いものをと内心思ったが寝てしまった自分が悪いと諦めた。
重いリュックを背中に背負い、靴を履き替えようとしたら中庭から喋り声が聞こえた。別におかしな事ではないのだが、その喋り声がもめていて気になり歩く足が止まった。
僕は様子を見ようと中庭の方に足を向けたときだ。
「ぐわっ」
誰かの鈍い声とドサッと何かが倒れる音が聞こえた。
僕は走って中庭に向かった。
そして、目を疑った。
え?
とっさに出そうになった声をぎりぎりのところで飲み込んだ。
見たくない。
聞きたくない。
耳を塞いでこの場から立ち去りたい。
見なかった事にしたかった。けれど、出来なかった。
あの日と似ている気がしたから。草の匂いが鼻を突きマスクの上から鼻を抑えた。
目の前には僕のよく知る皆から好かれる咲良と、皆からよく非難の声をあげられる大山先生がいた。
よく知った、というのは嘘だ。今目の前にいる咲良は僕の知らない咲良だ。もっといえば思い出したくない咲良。
大山先生は頭から血を流しながら地面に倒れ、その隣には黒く滲んだ少し大きめの石があった。さっきの鈍い声は大山先生のものか。咲良は今朝没収された携帯を左手に握りしめ、大山先生をただじっと見ていた。
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