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歩くたびに鳴るコンクリートの乾いた音と
カランカランッ
ペンキの缶と刷毛が当たる、元気な冷たい音を響かせて少年は歩く。
冬の始まりの凍てつく空気が、オーバーオールを着た彼の頬を赤くしている。
「にゃー」
「くぅ、離れちゃ駄目だよ」
少し後ろからついてくる灰色の猫に、振り向かずにそう告げた。
少年は、ずれたキャスケットの帽子をかぶり直しながら曇った空を見上げる。
今日の仕事は終わり。
明日の仕事のために彼は地上に降りてきた。
少年のことを知らない人間もいるし、天気職人と呼ぶ歌手もいる。天気を科学的に解明した人もいる。
呼びたい人は適当に呼べばいいし、解明したい人は勝手に解明すればいい。
少年には科学的になんて分からないし、知りたいとも思わなかった。
ただ毎日ひたすら
キャンバスに描き続けるだけだ。
相変わらず刷毛とペンキ缶が当たり、うるさい音が辺りに響いているが、もう長年聞いているので慣れてしまった。
ちょっと曇った今日は
どんな人間に出会うだろう。
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