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「にゃー」
急に聞こえた鳴き声に下を見ると、灰色の猫が甘えるように足元を動き回っていた。
あまりの人懐っこさに思わず猫を抱き上げた。
「お前、何処の猫だー?首輪ないけど飼い猫かな……」
「くぅは珍しい猫なんだよ」
声がした方に視線を移すと、そこには小学生、いや中学生くらいの、無表情の少年が立っていた。
ふわふわとしたブロンドの髪に青空のような目。
彼は、ペンキが付いたオーバーオールを着てキャスケット帽を被り、両手に刷毛の入ったペンキ缶を持っている。
「あ、君の猫?」
ゆっくりと猫を降ろし尋ねた。
「僕の猫……って言うよりもいつも一緒にいるだけ。」
するとその猫はペンキ少年の足元に駆け寄り、にゃぁにゃぁと鳴いた。
少年はちょっと猫を見つめ、そして俺に視線を戻す。
「くぅは毎日、色が変わるんだ」
「色が……変わる……?」
ペンキ少年の言葉に俺は首を傾げた。
「うん……まぁ……信じなくてもいいけど」
不思議な少年はペンキ缶を置き隣のブランコに腰かけた。
「君……誰? 何才?」
何才か分からない横顔に思わず尋ねる。
少年はきょとんとした後、
「名前はソラ。歳は分からない」
笑顔も見せずそれだけ答えた。
「分からない……?ふーん……ま、いいや。俺は佐久間徹、小学6年」
体を揺らすと、ちょっと錆びたブランコが悲鳴を上げる。
それでも俺は勢いよくこいだ。
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