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ソラは置いてあるペンキ缶を両手に持った。
猫もソラについていく。
彼は背を向けたまま口を開いた。
「人間はすぐに決めつける。どうせ叶わないだとか、自分じゃどうしようもないだとか。決めつけるのは勝手だし、僕に害があるわけじゃないから別にいいけど……」
カランッとペンキ缶と刷毛が当たる音が、響いた。
「諦めないで勝ち取ったレギュラーのように、諦めないで願えば叶うこともあるのにどうして人間は諦めるのかな」
「それは……」
それはきっと、願って叶わなかった虚しさを感じたくないから。
ギュッとブランコの鎖を握る。
俺は軽くブランコをこぎ続けた。
何かにすがるように。
「変に期待したくないから……」
我ながら情けない声だった。
靴と地面が擦れる音を鳴らして、砂埃と共にブランコは止まった。
ソラの背中は、さっき幼いと思った横顔とちょっと違っていた。
「運命とかは確かに神様が決めるものかもしれない。けど……空を作るのは僕の仕事だ」
少年が歩くたびにカランッという音が辺りに響きわたる。
「君が強く望んだら……明日はきっと晴れ、だよ」
その言葉を残して、不思議なソラというペンキ少年は冬の始まりの冷たい空気に消えていった。
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