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『17時のシンデレラ』
○ オフィス・中
堂々と歩いている鬼頭マキ(25)。
シルバーのイヤリングが光る。
○ 映画館・中
映画を見ているマキ。隣には山本ヒロシ
(28)。
ヒロシとマキ、手を重ねている。
○ 公園
マキとヒロシ、手を繋ぎ、笑顔で歩いて
いる。
マキ「今日は楽しかったー。いい映画だった
ね」
ヒロシ「最後は泣きそうになったよ」
マキ「フフフ。私も」
マキ、腕時計を見て。
マキ「あっ、一度家に帰らないと」
ヒロシ「もうそんな時間か。じゃあ、またあ
とで」
マキ「ごめんなさい。19時に駅前でいいのよ
ね?」
ヒロシ「合ってるよ」
マキ「わかった」
と手を振り、笑顔で去って行くマキ。
マキの背中を目で追うヒロシ。
ヒロシ、設置されてている時計を見上げ
る。
秒針が16時45分を指している。
ヒロシ「今日もか……」
○ レストラン・中・夜
窓側の席で食事中のマキとヒロシ。
ヒロシN「(マキを見ながら)いつも夕方に
なると、家の用事で帰ってしまう。仕事も
定時で帰ってしまうらしいけど……」
マキ、ヒロシの視線に気付いて、
マキ「どうしたの?」
ヒロシ「――なんでもないよ」
○ 公園
マキ「じゃあ、またね」
ヒロシ「ああ」
手を振って、去って行くマキ。
こっそりとあとを追うヒロシ。
○ 駅
ロッカーからボストンバッグを取り出す
マキ。
ヒロシN「あのバッグは……?」
○ 繁華街・夕方
人で溢れている街路。
ヒロシ、前を歩くマキを見逃さないよう
に追っている。
マキ、横道に入る。
ヒロシN「なんであっちに……?」
ヒロシ、マキを追っていく。
○ 裏通り・夕方
ヒロシ、ソーッと覗く。
マキ以外に人けがない。
マキ、身の毛が育つようなうなり声をあ
げる。爪が伸び、歯は牙のよう尖り、角
が生え、皮膚が鱗のような物に変化して
いく。
シルバーのリングが光る。
ヒロシ「(思わず)ヒッ」
マキ、ヒロシがいるほうを向く。
腰が引けて立てないヒロシ。
マキ、ゆっくりとヒロシに近づき、
マキ「この姿を見られたくなかったから、会
わないようにしてたのに……」
マキ、涙を流しながら、ヒロシの首筋に
噛みつく。
ヒロシの顔から血の気がなくなっていく。
ドサッと倒れるヒロシ。
マキ、元の姿に戻っていく。ボストンバ
ッグを開け、着替える。
マキ、動かないヒロシを見る。涙を一粒
こぼしながら、
マキ「今までありがとう」
と、シルバーのイヤリングを取り、倒れ
ているヒロシの横に置いて、去って行く。
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