日没後の友人

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「ま、眩しい……頭がボーっとする……」  九家(きゅうけ)くんは線が細く、いつもユラユラ揺れているような印象がある。  帰り道の足取りも、なんだかおぼつかない。 「ねえ、九家くん、いつも疲れているみたいでけどさ、夜遅くまでバイトしてるとか?」  僕が聞いてみても、 「別に……そんなんじゃ……」  と、呟くだけだ。  陽が傾き、徐々に薄暗くなってきた時、僕は、 「あ、この前の漫画、ありがとう。面白かったよ」  と言いながら、彼を見た。 (あれ?…………)  なんだかさっきより、顔がシャキッとして背筋も伸び、足取りもしっかりしているような。 (気のせい……だよね……) 「面白かったでしょ! 俺、続きが楽しみでさ」  なぜか声もハッキリしてさっきよりかなり積極的な人、という印象に。  気のせい? と戸惑っていると、 「あ! そうだ! 今から俺の家に遊びに来ない?」  そう言って僕の顔を見た、その時、彼の元気一杯の笑顔から艶っぽい唇が光ったのだ。 (え! なに今の……濡れた真っ赤な唇……)  ゾクッとした。  もう陽は落ち、辺りは暗い。だから僕の見間違いなのかもしれない。 「来てよ! ね、いいでしょ?」  気が進まないけど、断る理由が思い付かない。 「……あ、ああ、うん……」  こうして僕達は暗闇へと消えて行った。  この後、僕をみ見た者は誰もいない――――
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